いつかどこかで私はあの目を見たことがあった。

己と同じ黒い髪と黒い瞳をしたあの人は自分を妹と呼んだ
同じといっても自分の目の片方はその時深い青だったのだけれど
本当は女人禁制のこの場所にいることを許された巫女の自分を
手放した記憶の奥底に確かに存在する声であの人は妹と呼んだ
悲痛そうなその声音が頭の中で木霊する。
謝らなければいけない気持ちになる。
前を歩く薄茶の髪が揺れるのを見ながら思わず呟いてしまった。


「ごめんなさい」



どうしてか、己の手を引く彼も同じことを思った気がした。




帰る日はまだ遠い。